マツダは、電動化のマルチソリューションを実現するための新たな「ライトアセット戦略」を発表しました。協業や生産効率向上により、資産を最大限に活用しながら、低コストで競争力のある電動車開発を進める方針です。
マツダ、新戦略「ライトアセット戦略」で電動化を加速
電動化を支える「ライトアセット戦略」とは?
マツダは、2030年までを「電動化の黎明期」と位置づけ、環境規制や市場の変化に柔軟に対応するため、電動化技術の開発を加速しています。その実行戦略が今回発表された「ライトアセット戦略」です。
この戦略では、既存資産の活用と協業を推進し、開発・生産の効率を高めることで、コストを抑えつつ電動車の市場投入をスムーズに進めることを目指しています。
「ライトアセット戦略」の具体的な効果
- 電動化投資の最適化
インフレの影響で2兆円規模となる見込みだった投資額を、協業を活用することで約1.5兆円に抑制。特に電池投資は、自社調達から協業に切り替えることで、約半分に削減する見通し。 - 開発・生産効率の向上
- バッテリーEVの開発投資を40%削減、開発工数を50%削減
- バッテリーEVとエンジン車を混流生産することで、専用工場の新設を回避し、初期設備投資を85%低減
- 量産準備期間を80%短縮し、より早く市場投入可能に
進化する「マツダ ものづくり革新2.0」
マツダは、これまでも独自の開発・生産プロセス革新「マツダ ものづくり革新1.0」を展開してきましたが、電動化時代に対応するため、さらなる進化を遂げた「マツダ ものづくり革新2.0」を導入します。
この新たな取り組みでは、AIを活用した開発の効率化や、無人搬送車(AGV)を導入したフレキシブルな生産体制を確立。バッテリーEVとエンジン車の混流生産により、変化する市場ニーズにも迅速に対応できるようになります。
次世代技術「SKYACTIV-Z」とバッテリーEVの展開
SKYACTIV-Zとは? マツダの次世代エンジン戦略
「SKYACTIV-Z」は、マツダが開発した2.5L直列4気筒ガソリンエンジンで、環境規制の強化に対応しながら、走る歓びを提供するための最新技術を搭載しています。
主な特徴
- 排気量:2.5L
- エンジン形式:直列4気筒ガソリンエンジン
- 対応規制:ユーロ7、米国LEV4、Tier4
- 特徴:高燃費・高出力・低排出ガスを実現
- 搭載モデル:2027年に次期「CX-5」から導入予定
このエンジンは、ハイブリッドシステムと組み合わせることで、より高い燃費性能とパフォーマンスを発揮します。また、マツダ独自の燃焼技術を活用し、厳しい排ガス規制に適合しながらも、従来のエンジンと同等の出力を維持します。
燃焼技術の革新—「究極の燃焼」に向けた取り組み
SKYACTIV-Zは、マツダがこれまで培ってきた「SKYACTIV-G」「SKYACTIV-X」の技術を進化させ、さらに高効率な燃焼技術を実現しました。
- スーパーリーンバーン(希釈燃焼)
- 空燃比を最適化し、燃焼効率を向上
- 低燃費と高出力を両立
- 遮熱技術の強化
- 燃焼室の熱損失を最小限に抑え、熱効率を向上
- 高圧縮比によるパフォーマンス向上
- 従来の2.5Lエンジンのハードウェアを活用
- 既存技術を活かしながら、低投資で開発
これにより、SKYACTIV-Zは従来のエンジンと比べて熱効率の高い燃焼を実現し、燃費性能の向上を達成しています。
電動化時代に適応する「SKYACTIV-Z」の役割
EV化が進む中でも、マツダは「マルチソリューション戦略」を掲げ、さまざまなパワートレインを提供する方針です。SKYACTIV-Zは、その中心となるエンジンとして、ハイブリッドやプラグインハイブリッド(PHEV)との組み合わせも視野に入れています。
また、同技術を直列6気筒エンジンやロータリーエンジンにも展開する計画があり、今後のマツダ車全体の基盤となる可能性があります。
「SKYACTIV-Z」は、環境規制の厳格化に対応しつつ、走る歓びを維持するために開発されたエンジンです。2027年の次期CX-5への搭載を皮切りに、今後のマツダ車に順次展開される予定です。
燃費・走行性能・環境性能のバランスを追求した「SKYACTIV-Z」が、マツダのモビリティの未来をどのように変えていくのか、注目です。
マツダのEV戦略:「意志あるフォロワー」としての柔軟な対応
マツダは、世界各国で異なるEV市場の進展に適応するため、「意志あるフォロワー」戦略を掲げています。地域ごとに異なる電動化の進展に対応しながら、2027年には自社開発のバッテリーEVを市場に投入する計画です。
この戦略のもと、EVの導入を段階的に進める3つのフェーズを設定しています。
- フェーズ1(2022-2024年):協業を活用し、長安マツダと共同開発したEVを導入
- フェーズ2(2025-2027年):EV専用プラットフォームを採用し、マツダ独自のEVを展開
- フェーズ3(2028-2030年):EV市場の成長に合わせ、さらなる電動化モデルを投入。長安マツダとの協業モデル第3弾、第4弾を検討
この柔軟なアプローチにより、EV市場の変化に迅速に対応できる体制を構築しています。
EV専用プラットフォームで高い柔軟性を実現
マツダが開発するEVは、新たに設計されたEV専用プラットフォームを採用。このプラットフォームの最大の特徴は、どのような電池タイプにも対応できる高い柔軟性です。
EV専用プラットフォームの特徴
- さまざまな電池タイプを搭載可能
- 進化するバッテリー技術に適応し、将来的な技術革新にも対応できる設計。
- 複数の車型に展開可能
- SUV、セダン、クロスオーバーなど、さまざまなモデルに応用できるプラットフォーム設計。
- 効率的な開発・生産プロセス
- AIを活用したモデルベース開発を採用し、設計・試作段階の効率化を実現。
このEV専用プラットフォームにより、開発工数を50%削減、開発投資を40%削減することが可能になり、よりスピーディな市場投入が可能になります。
効率的な生産体制でEVの競争力を向上
マツダは、EV専用工場を新設するのではなく、既存の生産ラインを活用した「混流生産」を採用。これにより、
- 初期設備投資を85%削減
- 量産準備期間を80%短縮
と、大幅なコスト削減と生産効率の向上を実現しています。
また、無人搬送車(AGV)を導入し、EVとエンジン車の生産ラインを統合することで、需要変動にも柔軟に対応できる生産体制を整えています。
持続可能な成長を目指して
マツダは、自動車業界が大きな変革期を迎える中、持続可能な技術開発と経営の柔軟性を両立させながら、「走る歓び」を次世代に適応させていきます。「ライトアセット戦略」によって、低投資で高い資産効率を実現しながら、環境性能・走行性能・経済性を兼ね備えた車づくりを推進していきます。
MAZDA NEWSROOMマツダ、電動化のマルチソリューションを具現化する「ライトアセット戦略」を公表|ニュースリリース