マツダの2025年3月期第3四半期決算は、純利益が前年同期比45%減の905億円に。販売費の増加が響いたが、北米でのSUV販売は好調。米国の関税政策や中国市場でのEV販売の苦戦が影響し、生産体制の見直しも視野に入れる。
マツダ、2025年3月期 第2四半期決算を発表。販売奨励金で大きく減益
マツダが発表した2025年3月期第3四半期(2024年4〜12月期)の決算は、累計では売上高が前年同期比3%増の3兆6894億円と成長したものの、純利益は45%減の906億円と大幅減益となりました。最大の要因は販売競争の激化による販売費の増加で、特に米国市場での販売奨励金の影響が大きかったとされています。
北米市場の成長と販売費の増加
世界販売台数は4%増の96万6000台と堅調に推移しました。なかでも、マツダの販売の約半数を占める北米市場では22%増と、同期として過去最高の販売台数を記録しました。SUVの販売が好調で、円安効果も売上増に寄与しました。一方で、販売拡大を支えた販売奨励金の増加が利益を圧迫。販売費の増加により、営業利益は26%減の1483億円に落ち込み、販売費だけで1043億円の減益要因となりました。
ただし、マツダは販売奨励金が減少傾向にあるとし、業績の立て直しを図っています。2024年12月時点で、米国の販売奨励金は1台あたり約3,000ドルまで低下。これは9月のピーク時(3,500ドル)から減少し、業界平均より約1,000ドル低い水準です。ハイブリッド車(HV)の販売拡大や商品力向上が奏功し、販売奨励金に依存しない販売戦略が進みつつあります。
米国関税問題とマツダの対応策
米トランプ大統領は、メキシコからの輸入車に対して3月から25%の追加関税を課す方針を示しており、これがマツダの収益に大きな影響を与える可能性があります。実際、野村証券の試算では関税が発動されればマツダの営業利益に44%の影響が出るとされています。
なぜマツダはこの関税の影響を大きく受けるのでしょうか?
- 米国向け販売比率の増加
2021年3月期のマツダの世界販売に占める米国の割合は23%でしたが、2025年3月期の予想では33%にまで上昇。米国市場への依存度が高まっています。 - 米国内での生産比率の低さ
2024年の米国向け販売台数は42万4379台ですが、このうち米国内で生産されたのはわずか2割程度。残りは日本やメキシコからの輸出に頼っているため、関税の影響を大きく受ける構造になっています。
これを受け、マツダのジェフリー・エイチ・ガイトンCFOは記者会見で「生産体制の見直しの可能性はある」と発言しました。具体的には、
- メキシコ工場での生産台数を減らし、日本からの輸出を増やす
- マツダが得意とする「スイング生産(柔軟な生産地変更)」を活用し、他地域向けの生産を調整する
といった対策が検討されています。ただし、「まだ何も決定していない」とも述べており、関税発動の有無や業界全体の動向を見極めた上での判断となりそうです。
販売奨励金の動向と今後の業績見通し
北米市場では販売奨励金(値引き)の増加が続いていましたが、2024年12月時点では1台あたり約3,000ドルと、ピークだった9月(3,500ドル)から減少傾向にあります。業界平均よりも1,000ドル低い水準となり、コスト削減の取り組みが進んでいることがうかがえます。
また、2025年3月期の通期業績予想は以下の通り据え置かれました。
- 売上高:5兆円(前期比4%増)
- 純利益:1,400億円(33%減)
1月の米国販売は前年同月比11%増と、1月としては過去最高の台数となりました。これは、ハイブリッド車(HV)の販売拡大や機能強化が寄与したと考えられます。
EV戦略の見直しと中国市場の厳しさ
マツダはEV戦略を継続するものの、市場環境の変化を受けて慎重な姿勢を強めています。ガイトンCFOは「新型EVの2027年導入計画は変えない」としながらも、EV市場の動向について以下のように言及しました。
- 「中国以外の主要国ではEV需要が横ばいか減少傾向にある」
- 「2030年までに世界販売に占めるEVの割合を25〜40%にする計画だが、下限の25%に近づく可能性が高い」
さらに、中国市場ではEVシフトが進んでいるものの、地元メーカーが圧倒的に強い状況にあり、マツダのEV販売は苦戦を強いられています。2023年10月には、長安汽車との合弁で開発した新型EV「EZ-6」を投入しましたが、競争の激しさから2024年10〜12月の販売台数は前年同期を4,000台下回る結果となりました。その影響もあり、2025年3月期の中国販売台数予想は2万台引き下げられ、前年比19.7%減の見通しです。
今後、マツダはEZ-6の認知度向上と、年内に発売予定の新型EV(SUV)での巻き返しを図る方針ですが、中国市場におけるEV販売の厳しさが続く中で、当初想定していたEV成長戦略の修正が必要になる可能性が高まっています。
各市場の動向
ほら、危惧していたことが現実になってきているではないですか…。
決算資料・プレゼンテーション資料|IR資料|IR情報|MAZDA 企業サイト
決算:マツダ24年4〜12月期、45%減益 販売費が増加 – 日本経済新聞
マツダ、生産見直し「可能性ある」 メキシコ追加関税で – 日本経済新聞