マツダは、サイドエアバッグの衝撃をより効果的に軽減する独自の構造に関する特許を取得しています。
マツダ、サイドエアバッグの衝撃軽減構造に関する特許を取得
特許7533104 サイドエアバッグ装置及び、これを備えた車両用シート
この発明に関する特許は、自動車の側面衝突時に乗員と側壁部(ドア)との間に膨張展開するサイドエアバッグ装置に関するものです。
背景
従来のサイドエアバッグ装置は、側面衝突時に乗員の頭部や胸部への衝撃を軽減するために、シートバック側部からエアバッグを膨張させ、乗員とドアとの間を保護するものでした。また、これに加えて、シートバック内に副膨張部を設け、乗員を車室内側に移動させることで、衝撃をさらに軽減する方法も提案されていました。しかし、このような従来技術では、シートバックを介して乗員を移動させる量が不十分であり、また、エアバッグ装置が大型化することで、シートのデザイン性や乗り心地に悪影響を与える可能性がありました。
課題
人体の骨格構造を考慮し、乗員と側壁部との間の空間を確保しつつ、荷重分配を最適化できるサイドエアバッグ装置を提供することです。特に、乗員の胸部や腹部、腰部などの耐性が異なる部位に応じた荷重分配を行うことで、乗員の人体に過剰な負荷がかからないようにすることが求められています。
解決手段
発明者は肋骨の前側と後側での断面形状の違いに注目し、肋骨後側の脊椎周辺が耐性の高い部位であることを利用して、荷重分配を最適化するサイドエアバッグ装置を開発しました。この装置では、エアバッグが展開する際、内側基布が車両前方への膨張を規制される一方で、背部保護領域を構成するように内側基布の一部が膨張し、乗員の背部とシートバックとの隙間を埋めることで、乗員を車両内側に大きく移動させることが可能となります。また、乗員の上体を車両内側へ回転させることで、肋骨前側の低耐性部位をドアから遠ざけ、側面衝突時の衝撃を軽減することができます。
効果
エアバッグが一つの袋体でありながら、側部保護領域と背部保護領域の両方を備えることで、複数のエアバッグを設ける必要がなく、コンパクトな装置を実現できる点が挙げられます。さらに、規制部材によって膨張範囲を適切に制御することで、肋骨後側の高耐性部位に対する荷重分配が最適化され、乗員の安全性が向上します。また、シートバックと乗員の背部との隙間に応じて背部保護領域の大きさを調整できるため、乗員に対する保護がより効果的に行われます。